「…おいで」
おずおずと伸ばされる手が、この手に触れる前に…腕を掴んで抱き寄せる。
「わっ…」
「ふふ…ようやく?まえたよ、可愛い人」
「と、友雅さん」
腕の中で、頬を朱に染め恥らう異世界の姫君。
何故、私たちが出会ったのか…そんなものはどうでもいい。
「今宵は、この腕から放すつもりはないよ」
「……は、い」
「いいこだ…では、まずは口づけからはじめるとしようか」
「い、いちいち…言わないで下さい」
「おや、どうしてかな?」
「恥ずかしい…ですから」
そんな彼女の様子を見て、指先で耳にかかる柔らかな髪を払うと、そこへ唇を寄せる。
「恥らう姿も、この目に焼き付けたいのだよ。勿論、これから見せて頂ける艶やかな姿も…ね」
大げさとも思えるぐらい震えた彼女の肩を、抱き寄せた腕で押さえ込む。
「さぁ、殿。この胸に灯した恋の熱さ、今宵はその身で感じて貰おうか」
そっと体重をかけ、その場へ身体を横たえる。
「おいで、姫君。私の、愛しい人…」
まずは約束どおり、口づけからはじめよう。
おいで…といえば、姫君で、姫君といえば、友雅さん。
2010/06/16